それはないだろう
アイラス航空(現エクセル航空)の顧客対応
2016/02: 発行
はじめに
アイラス航空(現エクセル航空)をご存じでしょうか?
ヘリコプターを数機所有し、那覇空港を拠点に沖縄の離島への送迎、および遊覧飛行を実施している航空会社です。
先日このヘリコプターに搭乗したのですが、とてつもなく不愉快な経験をしました。
一体何があったのか、事実のみを正確にお伝えしたいと思います。
もしかしらこれから利用される方もいらっしゃるでしょうが、予約される前にぜひ本書を一読頂き、決して損のない契約を結んで頂きたいと思います。
またアイラス航空の経営者に対しては、自社の短期的な利益と顧客満足を基にした長期的な利益のどちらが大切か、じっくり考えてみるきっかけになる事を期待します。
搭乗前日
2015年7月12日
突然の訃報を受けて、明日までに沖縄離島の渡嘉敷島から、那覇を経由して長崎に行かなければなりません。
ところが前日までの台風の影響で、今日も沖縄本島に戻る船が欠航しています。
明日那覇まで船が出れば良いのですが、万一欠航となると選択肢は一つだけで、ヘリコプターをチャーターして那覇まで行くしかありません。
気になる料金ですが、万一船便が欠航した場合は、ヘリコプターのチャーター料金の半分を村が補助してくれる制度があります。
とは言え、それでも32,400円と結構な値段です。
ただしヘリは5人乗りですので、もし同じように明日島から那覇に渡る人が居たら、相乗りで料金の折半を期待できます。
実は以前アイラス航空に、搭乗人数が少ない場合アイラス航空側で相乗りの調整をして貰えるのかと、問い合わせをした事があります。
そのときの回答によれば、アイラス航空としてもなるべく多くの人に利用してほしいので、相乗りの調整を行なうとの事でした。
という訳で、万一船が欠航した場合でも、誰か同じように渡嘉敷島から那覇に行く人が居る事を祈りながら早めに床に就きます。
予約
2015年7月13日午前8時
何とか船が出港してくれるのを願っていたのですが、朝8時に島内放送で流れたのは、無情にも全便欠航の知らせでした。
午前9時
しょうがないので、早速アイラス航空に電話します。
電話をすると女性の担当者が出たので、本日の渡嘉敷島から那覇までのヘリの予約をしたいと告げます。
また他に渡嘉敷島から那覇に向かう人は居ないかと尋ねたら、誰も居ないとの事でした。
となると、32,400円払って一人で乗るしかありません。
15:45の那覇発の便に乗りたいと告げると、それでは14:00の渡嘉敷島のヘリポート発の予約となりました。
できれば那覇で身支度用の買い物ができるので、その前の時間帯の方が良いのですが、他の離島の足にもなっているので、余り無理も言えません。
という訳で、それでお願いしますと伝えます。
すなわち、口頭ながらこれが契約締結の瞬間です。
予定変更
午前10時
まだ多少時間に余裕があるので、荷物の整理等をしていると、アイラス航空から電話がありました。
それによるとキャンセルが入ったので、出発時間を早めたいという事です。
早い分には問題無いので、了解して12:10分渡嘉敷発という事になり、12時までにはヘリポートに居てほしいという事でした。
出発
午前10時30分
渡嘉敷島のヘリポートは、北の山の中腹にあるのですが、近くに駐車場はなく、港の駐車場に車を置いて、ヘリ-ポートまで歩いて登る必要があります。
渡嘉敷島のヘリポート(赤矢印)
標高でせいぜい100mほどですので、歩いても30分程度だと思うものの、心配なので早めに出発する事にします。
山登り
午前10時45分
車を停めて山道を登り始めます。
登り始めて暫くすると、バタバタとヘリの飛行音が聞こえます。
座間味に行くヘリかなと思いながら歩を進めると、山陰にヘリが見えてきます。
あれ、渡嘉敷島のヘリポートに向かっているのかな、と思いつつ歩を早めます。
到着
午前11時00分
ヘリポートに着くと、そこには先ほどのヘリがしっかり着陸しており、これから乗機予定とおぼしき男性2人と、ヘリポートまで見送り来た島の方が2人がいらっしゃいます。
なぜ1時間も前にヘリが来ているのだろうと訝る気持ちより、嬉しさの方が上回っていました。
これに乗れば、料金は割り勘で32,400円の1/3の1万円程度で済み、おまけに1時間早く那覇空港に到着します。
有り難いと思いながら、ヘリの係員に12時に予約したものだが、早く着いたのでこのヘリに乗せて貰えないかとお願いした所、他の乗客の了解も貰ってOKとの事でした。
ただし、その後担当者からアイラス航空の営業担当と携帯で話してほしいと言われて、携帯を受け取って聞いた話は驚愕の内容でした。
それによると、12時の便をキャンセルする事になるので、キャンセル料として32,400円全額払え、更にこれから乗る11時の便の料金(10,800円)を支払えとの事です。
という事は、この便に乗るには4万円以上(正確には43,200円)支払う必要があるという事です。
絶句です。
アイラス航空とは、こんなにも阿漕(あこぎ)な企業だったのか!
確かに約款上ではそうなるのでしょうが、顧客の利益を優先するのならば、ここで3人乗せるのが道理でしょう。
と言うより、追加で乗る人ができたので、11時に一緒にどうですかと事前に連絡すべきです。
ですがアイラス航空は、顧客の利益など無視して、自社の利益を最優先したのです。
おまけに電話予約した順番は私が1番だったのですから、先に乗る権利は私の方にあった筈です。
どうするか電話で尋ねられ、もちろん安い12時の便に乗ると伝えました。
そしてこの事実は、ネットに必ず書こうと心に決めた瞬間です。
電話を切って、この便には乗らないと現場の担当者にも伝えると、更に現場の担当者から追い打ちの一言が待っていました。
天気が悪くなっていきたので、もしかしたら12時には戻ってこれないかもしれない。
ご存じかもしれませんが、ヘリは有視界飛行が原則です。
一瞬たじろぎましたが、さすがにこのむごい仕打ちに対して、4万円以上を出してまで許容する程の度量の広さも金銭的余裕もありません。
という訳で、それでもこの便には乗らないと告げます。
忍耐
11時18分
無情にも、ヘリは二人の乗客を乗せて飛び立ちます。
そして、来るか来ないか分からないヘリを、待合所はおろか日影が一切無いヘリポートで待ち続けます。
その暑いことといったら、ありません。
おまけに自動販売機もありませんので、飲み物もありません。
港まで下りる手もありますが、この暑さの中でまた往復したら、これからまだまだ旅程があるのに汗まみれになってしまいます。
12時00分
待てど暮らせど、ヘリは来ません。
本当に欠航になったのではないかと、徐々に心配になってきます。
12時15分
予約時間を過ぎても、まだ来ません。
曇りながらも、時折射す日差しにジリジリと肌を焼かれます。
アイラス航空に電話して状況を確認しようかと思ったのですが、本来なら向こうから電話してくるべきなので止めました。
取り敢えず、万一ヘリが欠航した場合の対応策を考えます。
離陸
12時30分
そうこうしている内に、やっとヘリの機影が見えてきました。
この後の話は、もうさして重要ではないでしょう。
12:32にヘリポートに着陸し、持ち物検査等の通常の手続きを終えて搭乗します。
通常でしたらここで乗員に嫌味の一つでも言いたい所ですが、そんな無意味な事はしません。
なぜならば、こんな顧客対応を決めたのは従業員ではなく、この会社の経営方針がそうだからです。
それに従っているだけの従業員を攻めても酷ですし、無駄です。
と言うより、従業員の中にもこの様な対応を心苦しく思っている方が、少なからずいらっしゃる筈だからです。
そして12:40に離陸です
フライトは快適で、もし1時間以上も前に乗れて、おまけにもっと安く搭乗できていたら、私はアイラス航空に好印象を持ったでしょう。
ですが今は、嫌いな企業の一つでしかありません。
墜落事故
さて今までは、かなりアイラス航空に批判的な記事を書いてきましたので、最後に多少同情的な事も書いておきましょう。
実はこのアイラス航空ですが、前の年に墜落事故を起こしているのです。
航空事故の概要 (国土交通省 運輸安全委員会) | |
報告書番号 | AA2014-3-2 |
発生年月日 | 2013年12月31日 |
発生場所 | 沖縄県名護市古宇利大橋付近海上 |
航空機種類 | 回転翼機 |
航空機区分 | 回転翼航空機 |
型式 | ロビンソン式R44Ⅱ型 |
登録記号 | JA106Y |
運航者 | アイラス航空株式会社 |
事故等種類 | 海面への衝突 |
報告書 (PDF) |
公表 |
公表年月日 | 2014年06月27日 |
概要 | アイラス航空株式会社所属ロビンソン式R44Ⅱ型JA106Yは、平成25年12月31日(火)、沖縄県今帰仁村古宇利島所在の古宇利島場外離着陸場を発着する遊覧飛行を行っていたが、15時48分ごろ、沖縄県名護市古宇利大橋付近において海面に衝突した。 |
原因 | 本事故は、遊覧飛行中の同機が過大な速度及び降下率で海面近くまで降下したため、穏やかで透明度の高い海面上における高度判断を誤り、降下から上昇へ移行する時機が遅れ、海面に突入し機体を損傷させたことによるものと推定される。 同機が過大な速度及び降下率で海面近くまで降下したのは、同社に詳細な飛行要領を定めた標準作業手順書が用意されておらず飛行要領がそのときどきの機長の判断に委ねられていたこと及び機長が遵守すべき法令や規則を守ろうとせず安全への配慮を著しく欠いていたことによるものと推定される。 |
死傷者数 | 3名負傷(機長及び乗客2名) |
事故の詳細は上記報告書を読んで頂くとして、多少同情的になるのは購入したばかりの小型ヘリ1台を失い、なおかつ本事故に伴ない約4カ月営業自粛を続け、更にはその後の顧客離れから、以前と比べれば間違いなく経営が苦しくなっていると推測される事です。
海中から引き揚げられたロビンソン式R44Ⅱ型
となると、乗客の何人かが多少不愉快な思いをしてでも、売上至上主義に走らざるを得ないのかもしれません。
まとめ
さて如何でしたでしょうか?
何度も言いますが、これは全て真実です。
また念のためにお伝えしておきますと、アイラス航空の今回の対応において、契約違反は一切ありません。
ですが、アイラス航空の企業としてのビジョンや理念は一体何なのでしょう。
何のために沖縄に航空会社を立ち上げたのでしょう。
確かに、例え行き先が同じであっても乗客を何回にも分けて運んだ方が、短期的な売り上げは上がるでしょう。
ですが長期的な視点で見れば、それでは顧客満足度は低下し続け、やがてじり貧に陥る事は誰もが分かっている事です。
それに少しでも早くアイラス航空が気が付いてくれる事を、祈るばかりです。
アイラス航空(現エクセル航空)の顧客対応